2024/12/11 21:28

 避難所となった小学校の校庭で、子どもも大人も一緒になってキックベースボールをしている。みんな笑顔。映画「心の傷を癒やすということ」の一場面だ。ひとときでも笑いあえるようになる、それまでの道のりが、一人ひとりのエピソードとして描かれる。

 辛い、と言わないようにしているという小学生の男の子に「口に出さなあかん、苦しくなるで」と伝えるのはこの映画の主人公、阪神大震災時に心の医療に尽力した精神科医だ。瓦礫の中から聞こえる声に悩まされて安眠できない妻を山の上に連れて行き、ここなら安心、と告げる夫。子どもに心臓マッサージをし続けた看護師が両親から懇願され掴まれた手の感触を語る。

  この映画の制作チームが集まり作られた新たな作品が、来年の117日に一斉に公開されます。
「港に灯がともる」

https://minatomo117.jp/

先月末、試写会にご招待いただき、一足先に観てきました。

 

震災の年に生まれた在日コリアンの主人公灯(あかり)を演じる富田望生さんの演技(演技というか、なりきっていた)に圧倒されました。人が生きていく中で抱える苦悩は、一つの要因だけに起するものではなく、複雑に絡まり合っていることを教えてくれています。神戸が舞台なので震災のことはもちろん軸にある。家族の間で「こころ」という目に見えないものはどのように伝播されていくのか。苦しい、辛い、そんな感情が丁寧に扱われていると感じました。「主人公の灯が息ができるようになる物語」だと、上映後の安達もじり監督の言葉。息ができる、は、生きている、とは違う。ハッとさせられた。


 多くの人に見てほしい反面、リアリティがありすぎることで苦しくなる人が出てしまうのではとの心配も少し。ただ、ラストシーンを見たあと、「小さいけれど確実に信頼できる温かな灯が、心の中に灯ります。安心して見て下さい。来年の1月、私もまた映画館に足を運ぼうと思います。試写会では、引き込まれすぎることを恐れ、心の扉を少し閉じ気味で見ていましたが、今度は扉全開で望みます。ハンカチを握りしめて心置きなく泣いてきます。


https://www.instagram.com/minatomo117


https://x.com/minatomo117


 

© kazebunko/ashiya_mitsubachi since 2019