2022/04/30 14:07

 図書館や美術館を訪れたときの「お喋り禁止」というマナー。子どものころから厳しく教育されてきて、私たちの意識の中に当然のように刷り込まれている決まり事ですよね。私自身、図書館で走り回っている子どもたちに顔をしかめたり、美術館でお喋りしながら(たぶんご本人はひそひそ声のつもり)鑑賞しているグループの方々がいると、心の中で「後でお茶しながらしゃべれよ。」と心の中で毒づいたりしてしまう。


そんな中、お喋りしながら作品を見る「対話型鑑賞」というアートを鑑賞する方法に出会った。今まで「したらあかん、と言われていたことを、あえてする。」ということに興味がわいた。京都芸術大学の芸術表現・アートプロデュース学科で「対話型鑑賞プログラム」を専攻された白旗幌さんがナビゲーターをつとめるワークショップに参加したのは昨年の11月のことだ。この日はアート作品ではなく、身の回りにあるもの(この時のお題は、パイナップル、紅型染めの写真集など)を何分間か観察して、そのあとで参加者同士が思ったことなどをトークしあうというもの。同じものを見ても、他の人とこんなにも感じ方が違うのか、という当たり前だけど新鮮な感動を受けた。あちこちでワークショップを開催されている白旗さんだけあって、参加者の話の細部まで聞き逃すことなく、それはこういうことですか?と、まるでカウンセラーのように言葉を繋いでいく。ファシリテーターの技量は、ワークショップに参加する側の満足度に非常に大きく作用する。彼女のテクニックに感心したし、この人、どんな人なんだろう?と彼女の背景にとても興味がわいた。

                                      (伊丹猪名野神社でのワークショップの模様)

ちょうどそのころ「目の見えない白鳥さんとアートを見に行く」という川内有緒さんの本が話題になっていた。彼女の著作は、「バウルを探して」を読みファンになっていたので、購入して読んでいた。目の見えない人がどうやってアート作品を楽しむのか?という圧倒的多数の人々の感覚(もちろん私もその中の一人だ)を一気に覆してくれたこの本に圧倒された。その時に感じた気持ちと白幡さんのワークショップ後に感じた気持ちが重なった。以前、芦屋市立美術博物館で、「先入観を持たないで作品に向き合ってほしいのであえてキャプションは付けていません。」という展示に出会い、「作品のタイトル、制作年代、作者の出身地」などに引っ張られて作品を「解釈」していた自分に気づくきっかけをもらったことも思い出した。

「先入観」。これを取っ払ってくれる出来事に出会った時の爽快感ったらない。

是非風文庫でもお願いしたいと思い、昨日ついに実現した。告知からすぐに満席となり、定員を増やして2部制での開催。興味がわく感覚がフォロワーさんたちと共有できてうれしい。当日は、参加者さんたちの熱いトークと白旗さんの絶妙な受け答えがクロスする、思い描いていた以上の盛り上がりを見せた。

「対話型鑑賞ワークショップ」

一人でも多くの方にまずは体験してほしいので、風文庫での定例の会にできたらいいな、と考えています。

次回開催は、2022529日(日)13:30より。詳細は各SNSにてご覧ください。

対話型鑑賞ワークショップ | Facebook

白旗幌さんのTwitterはこちら→白旗座談会(対話型鑑賞)さん (@Horo_Shirohata) / Twitter

 

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