2021/07/17 12:58

風文庫のある芦屋は、大阪と神戸という大きな都市に挟まれたちいさな住宅地だ。私は小学4年からほとんどの年月を市内のどこかで暮らしてきた。震災で5年離れた以外は。こんなに長い間住んでいるにも関わらず、この街のことをあまり好きにはなれずにいた。少しずつ馴染んできたと実感するようになったのは、此処2年ほどのこと。風文庫をオープンしてからということになる。

今回、「地元芦屋で家族や友人と過ごす日常」をテーマに、芦屋の風景を描いてもらうことを考えたのも、その気持ちー芦屋の街があまり好きではなかった過去の自分からの内面の変化―の表れなのかもしれない。


昨年来、「蜜を避ける」ために芦屋に住まう人たちがまず考えたのは、「大阪や三宮に行かずにどうやって楽しみを見つけるか。」だったように思う。芦屋川沿いにはピクニックシートを広げお弁当を楽しむ家族連れや恋人たちが増えたし、六甲山登山の人口も確実に増えた。JR駅周辺も人出が減っている様子はない。日々の暮らしの延長線上に楽しみを見つけることが出来るのであれば、それはとても豊かな日々なのではないかな。

 今回出来上がったポストカードは、芦屋の春と夏が描かれた、以下の3枚。冬には第2弾も予定しています。

『高座の滝』
六甲山登山のメッカ、ロックガーデンの入り口にあります。今年の4月ごろ、滝の横の祠で、お孫さんに絵本を読んであげているご婦人を見かけました。その風景が忘れられず、作家さんにお伝えして描いていただきました。

 『阪急芦屋川駅ホームにて』
川の真上に駅のホームがあると、見える景色が広々として、晴れやかな気持ちになります。小学生の姉妹かな?風になびく髪がとても軽やか。阪急電車のほか、阪神電車の芦屋駅も川の真上にありますよ。

 『芦屋川河口』
村上春樹作品の中で「失われたもの」としてしばしば登場する、芦屋川河口の小さな砂浜。5月のよく晴れた日に撮ったその場所の写真を作家さんに見せたら、目を輝かせて「わー、小さいころ家族で潮干狩りに行きました!!」と。ある人にとっては「喪失の象徴」である景色が、またある人には「幸福な思い出」なんですね。視線は遠いところを見つめ、でもお父さんのTシャツをぎゅっと握った男の子の左手、お姉ちゃんの笑顔もたまりません。


水彩画作画:あいころもち(@aikoromochii) • Instagram
カードデザイン:小幡 明 / Mei Obata(@obatameiworks) • Instagram

*2021719日発売 
*1枚165円(税込み)
*各1枚づつの3枚セット・・・490円(税込み)
 (BASEショップでは、セットのみの販売になります)


芦屋だけでなく、阪神間にゆかりのある方には、どれも原風景なのではないでしょうか。夏のお便りにご活用ください。



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