2020/12/11 14:41
一か月ほど前のこと。
「はじめまして、○○と申します」と、ツイッターにダイレクトメッセージが届いた。「五月病」さんの作品を購入したいのですが風文庫で取り扱いがありますか?というもの。関西コミティアに何度か作品を出品している「五月病」さん。彼女はSNSなどを一切していないため、どこかで作品を目にしても検索してヒットするのは、昨年の秋の風文庫での「眠たいあたまで考えたい」展ぐらいなのかもしれない。その後、何度かメッセージのやりとりをして、最終的には直接ご本人から多くの作品を購入されたということをあとでお聞きした。
彼女の作品は、いわゆる「ZINE」ではあるけれど、紙を束ねて綴じただけにはとどまらない。そんな「形の面白さ」も魅力の一つではあるけれど、私が惹かれるのは、一つひとつの作品に息づいている「手づくりの不器用そうな素朴さ」「孤独感とその中にあるぬくもり」「おおらかなようで胸の中がチクチクするような繊細さ」だ。
ささやかだけれどこの小さな幸せを大切にしようと思えてしまう、精神安定剤のような世界。
「H町のクリスマス/山の上の灯台」は、彼女が「かつて住んでいた町」と「今住んでいる町」について書いたショートエッセイとモノクロのイラスト。
遠くの町に出かけなくても、心の中の町を探してみませんか?と問いかけられているよう。
(2020.12.11)